私はアルルに3泊したので3回の夕食を食べたのですが、どれもとても美味しくて思い出深いものとなりました。
今回は晩ご飯のお話ですよ。
初日の夕食は宿でとりました。
メニューは日替わりのコースメニューがひとつだけで、どうやら1Fのダイニングでゲストみんなで一緒にいただくシステムのようです。
シェフはオーナーのお嬢さんの彼氏でセバスチャンという名の30歳くらいのイケメン君でした。
彼は私を見ると「コンニチハ!」、「アツイネ!」などとカタコトの日本語を投げてくれる気さくなとこもあり人好きのするタイプのようです。
客室が4つくらいの小さな宿なのでいわゆる「カフェ飯」くらいを想像していたのですが、予想に反してなかなか美しく美味しい食事でした。
前菜はマグロのカルパッチョ風をジェノベーゼソースでいただきました。
添えてあったグレープフルーツが香りと酸味でマグロの生臭さを上品に消してくれていてとても効果的でした。
彩りもマグロの赤、ジェノベーゼソースの緑、グレープフルーツの黄色が白い皿の上に上品に配置されていて、(失礼ながら)こんな田舎の小さな宿の若い料理人が作ったとは思えない洗練された仕上がりにびっくりしました。
メインは豚ヒレロースト。
これは文句なしに本当に美味しかった!
付け合せに盛り付けられたアーティチョークのフリットもこの時期に旬でサクサクの食感がたまりません!
あまりの美味しさに注文したコート・デュ・ローヌがあっと間に減っていきます。
デザートはフランボワーズのミルフィーユ。
甘いクリームの口当たりにフランボワーズの酸味がワインに酔った私の脳をさらにいい感じに溶かしていきます。
美味しかったので食後のコーヒーの後にセバスチャンをつかまえて何か話したのですが酔っていてぜんぜん覚えていません。
褒めちぎったことは確かなんですが・・
二日目の夜は宿のお隣のピッツェリーアへ。
隣といっても300mほどの距離があったのですがワインも飲みたかったし、車を出すほどのでもないので徒歩で行ってみました。
店内ではいかにも地元の人らしい老若男女が楽しそうに食事をしています。
これはきっと美味しい店に違いないと期待に胸をふくらませながらも、店員さんの姿が見えないので入り口に立って待ってたら、近くのお客さんたちが適当に座れと手招きしてくれました。
それでも躊躇していたら常連らしきひとりがわざわざキッチンまで行って「お客さんだぞ~」ってな感じで店の人に声をかけてくれたのです。
そうしたら田舎の食堂のオカミはまさにこんな感じ!
というふうの小さな身体でいかにも働き者といった身のこなしで真っ白いエプロンを(というより私の印象では割烹着)をした中年の女性が「じゃあ、ここに座ってね」と椅子を引いてくれました。
私はこれまでの経験でプロバンスでの食事について学んだことがあります。
それは地元のレストランに入ったら自分のテーブルの周囲の人に”bonsoir!(こんばんわ)”と挨拶をしてから座るということです。
そうすると周囲の人々がとても暖かく迎え入れてくれるのです。
今回もそうしてみたらやはり効果は絶大でした!
私のテーブルの周囲のお客さんたちが皆さんこちらを向いて優しい笑顔で挨拶を返してくれたのです。
メニューを見てもちんぷんかんぷんだったので隣のテーブルの料理に目をやると、食べていたお客さんが「この料理はこれだよ」みたいに私の前に広げられたメニューを指差してくれました。
結局サラダとピッツアとワインを注文したのですが、期待通りに美味しい!
フランスでパスタとピザは(美味しくないから)食べてはいけないというジンクスもあてになりませんね。
もしかしたらオーナーはイタリア系の人かな?なんて想像したりして。
ここでの食事はとにかく楽しかった!
隣の席の人が「どこからきたの?」と尋ねるので「日本からです」と答えると「日本人だってさ」みたいなのが店の奥のほうまでリレーされていきました。
するとみんなの視線がさらに暖かくなったように感じました。
隣のテーブルの人と話していても他のテーブルの人がこちらを見て頷いてくれたりします。
すべてのフランス人がそうだとはもちろん言えないのでしょうが、このとき私のテーブルの周囲にいた人々は異文化、他人種の私にとても寛容で、気が付くと私は2時間近くをこの店で過ごしました。
いい加減酔っ払ったので夜気に当たり鼻歌を歌いながら300mを歩いて来た道を戻ったらセバスチャンがちょうど食事の後片付けを終えたところでした。
昨夜の食事の礼を言って座り心地のいい革張りのソファーに身を沈めると何か飲むかと聞くのでジントニックを1杯頼みました。
飲みながら、なぜ日本語を知っているのか尋ねてみましたら、彼が勤めたいくつかのレストランにはだいたいどの店にも日本人のコックがいたからだと教えてくれました。
私に対する態度から察するに、彼は概ね日本人に好感を持っているように感じられたのは先に出会った日本人のコックさんたちのお陰なんでしょうね。
感謝です。
明日は宿で食事をとりたいと伝えたら残念ながら明日は彼の週に1度きりのお休みとのこと。
代わりに近所の村にある彼のおすすめのレストランを教えてもらいました。
そして翌朝。
軽い二日酔いの状態で目覚めると
あれれ?
財布とスマホが・・・
ないよ・・・
長くなりましたので続きはまた次回に。