プロバンス記 その32 もっとも幸運だった最悪の日 ④

worstday2私がぶつけた車の修理代をレンタカーの保険で補償しようと提案した私に、男性は解決策が2つあると言いました。

「ひとつはあなたの言う通り保険を使う方法だよね。
これから警察と保険会社に電話してここでずっと待ってて、それから書類を書いて提出してね。
それからお金が支払われるわけだ。
あなたはフランスには住んでいないんだよね?

ふたつめの解決策はね、、、
まあ、これくらいなら50ユーロもあれば直せると思うんだよ。
だからあなたがここで私に現金で50ユーロ払うってことなんだ。」
もちろんこの提案は私にとって願ったりかなったりです。
保険を使う場合に必要な面倒な手続きと多くの時間がわずか50ユーロで解決できるなんて!
私は喜んで50ユーロの現金を男性に手渡しました。

「ひとりで旅行しているの?バカンス?」
と男性に問われたので、そうだと答えるとさらに
「プロバンスはどう?いいところでしょう?」と聞かれました。
「景色がいい。食べ物は美味しい。そして何より人がいい」
と答えると彼は笑いながら
「こんなことでせっかくの旅行の印象を悪くしないで欲しいんだ。
ここからの旅も楽しんで。」と。

じ~ん(しばし感動)・・・
ええ人や。。

彼らに別れを告げて、高速をカルカッソンヌに向けて車を走らせながら考えました。

私が車を停めた場所の前方は高速道路の本線に入るために車を加速させる道路に通じていました。
もし、彼らの車にぶつからなければ私の車はそこまで動いて大事故になっていたかもしれません。
私は彼らの車の1mくらい後方に車を停めていたので”ちょこっと”当たった程度の事故で済みました。
もし、これが車ではなく人にぶつかっていたらとか、、、
もし彼らがヤバい人だったらとか、
ものすごい高級車だったらとか、、、

モンペリエで失くした財布も捨ててもいいくらいに使い古したものでしたし、中に入っていた現金は20ユーロくらい。
クレジットカードを1枚失くしましたが後でカード会社に電話を1本入れれば済むことです。

いろいろありましたが、被害は考えうる限りで最小限だったのではないかと。。。
「なんて運がいい日だろう。」
心の底からそう思いました。

運転席でゆっくりと深呼吸をひとつ。
カーラジオのスイッチを入れて流れてくる長閑な音楽を聴きながら、もと来た道を安全運転で戻りました。

めでたしめでたし(笑)。

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